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 開催中のパリ・オートクチュールファッションウィークは公式スケジュール2日目の8日、「モードの帝王」アルマーニが手がけるクチュールライン、ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェなどが新作を発表した。11日に91歳の誕生日を迎える大御所はショー会場に姿を見せなかったが、モデルの起用や演出まで、創作以外でも陣頭指揮をとったという。

 この日は午前中、ミキモトやショーメなどの宝飾ブランドが開くハイジュエリーの展示会を渡り歩き、午後からは公式スケジュールで開催されたショー取材を重ねた。

ステファン・ローラン

 午後にはシャンゼリゼ劇場でのステファン・ローランのショーへ。モーリス・ラヴェルの「ボレロ」の生演奏とともに、巨大な前襟のジャケットや、裃(かみしも)を連想させるようなドレスをまとったモデルたちがランウェーを歩いた。

RVDK

 このショーが終わった時には、次のRVDKのショー開始予定時間を過ぎていた。しかも、場所は離れており、最短でも40分以上を要する距離だった。ダメ元で主催者が会場間で運行するシャトルバスに乗り込んだが、中心部をまたぐため渋滞に巻き込まれ、車内は絶望的な雰囲気に。隣の席の米国人女性編集者は「もうこれ、絶対無理だよね? いっそのこと次を飛ばして、その次の会場に向かったほうがいいのでは?」と力なく笑った。

 結局1時間遅れの到着だったが、意外にもRVDKは待ってくれていた。大きな植物の葉のようなドレス、カラフルなモップのような素材をパッチワークしたボリュームのあるトップスなどが心に残った。

写真・図版
RVDKの25年秋冬オートクチュールコレクション

フアナ・マーティン

 終了後は再び駆け足でシャトルバスに戻り、フアナ・マーティンのショーへ。ファーストルックの、縄で作られた独特の「キリストドレス」に心底驚かされた。

ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェ

 夜にはジョルジオ・アルマーニ・プリヴェのショーへ。91歳になるアルマーニは今回、医師から「大事を取ってパリへの渡航は控えてほしい」と助言され、本拠地ミラノに残った。関係者によると健康状態に問題があるわけではなく、直前にもリモートでモデルの起用方針などを巡ってスタッフたちに細かく指示をしていたという。

 アルマーニはコメントを発表し、「20年間のアルマーニ・プリヴェの歴史で、パリに行かなかったのは今回が初めて」「プリヴェへの参加は、パリのエネルギーを吸収し、リハーサルの高揚感を感じるチャンスだった。もちろん、それができないことは寂しいが、常に私の傍らにいてくれる有能なチームメンバーを信頼している」とした。

 新作コレクションは、黒を基調とした王道の作風だった。奇をてらうような作風を見かけることも多いオートクチュール期間において、きらびやかな総ビーズの刺繡、一目みて分かるような上質な仕立てのジャケットや、風にながれるように光沢を放つシルク素材が際立つ装いなどを目の当たりにし、何度もため息が漏れた。

 アルマーニは、今回の新作群に対してもコメントを出した。「デザイナーにとって黒は、最もクラシックであると同時に、極めて高い精度が求められる色彩。黒を用いる際には、一切の誤りが許されず、細部に至るまで正確さと完成度が要求される。これは、黒が衣服の構造やデザインの本質を明確に浮き彫りにするためだ」。さすが、としか表現のしようがないコレクションだった。

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